晩秋から初冬までの11月の季語を知ろう
季節を表す言葉である「季語」は、俳句に使われる言葉としてもよく知られています。また、上司や取引先へ送るビジネスメールやフォーマルな文書、上司へのお手紙などに添える時候の挨拶や結びの言葉にも、季語を使うと格が上がるのでおすすめです。
カジュアルなシーンでも知的でおしゃれな雰囲気になるでしょう。ここでは、晩秋から初冬にあたる11月の季語を、上旬・中旬・下旬に分けてみていきます。
時候の挨拶にも使える11月の季語【上旬】
11月上旬は、9月からの秋の季節が終わりを迎える晩秋の時期です。初秋では少しずつ色づいていた木々の葉色も、晩秋ともなると枯れ葉となり枝から落ちてしまうこともあります。初秋の季語にある美しく色鮮やかな言葉とは、対照的な季語が吹てくる時期です。
また、11月上旬は、北海道や東北など地域によっては晩秋とはいえすでに雪の気配もあるでしょう。時候の挨拶では「惜秋(せきしゅう)」や「霜秋(そうしゅう)」というように、暮れゆく秋を惜しむ言葉がよく使われています。
11月上旬の季語が示す天候や気候の言葉
まずは、11月の季語となっている天候や気候の言葉から見ていきましょう。9月の初秋から続いてきた秋の終わりということで「秋惜しむ(あきおしむ)」があります。また、秋を主語とした「行く秋」という言葉も11月上旬の季語です。
秋の終わりごろに降る雨は「秋時雨(あきしぐれ)」とも呼ばれています。「時雨」は美しい言葉ですが、降ってもすぐやむ雨という意味がある冬の季語です。「秋時雨」「春時雨」となると、それぞれの季節の季語になります。
11月上旬の季語が示す動物や植物の言葉
11月上旬の季語の中には、この季節を表す動物や植物の言葉も数多くあります。秋の作物を狙って畑を荒らす「猪」や晩秋に北から渡ってくる「雁」、猛禽類の「鷲」「鷹」「隼」なども、11月上旬、晩秋の季語となっています。
11月上旬の季語になっている植物の言葉は、イチョウの実である「銀杏(ぎんなん)」や瑞々しい香気が愛されている「柚子」、七十二候の「菊黄花あり(きくこうかあり)」も11月上旬の季語です。
11月上旬の季語が示す生活全般の言葉
季語は季節を感じさせる言葉なので、生活全般を表す言葉の中にもたくさんあります。「新酒」や「新米」など、晩秋の時期に出荷される食べ物も季語です。
菊の花を衣装に見立てた「菊人形」や、奈良の春日大社で行われている神鹿の角を切る行事「鹿の角切(つのきり)」も11月上旬の季語になります。季語の一覧である『歳時記』には、美しい季語や珍しい季語がたくさん掲載されているので要チェックです。
11月上旬の季語を使った時候の挨拶の言葉
11月上旬の季語を使った時候の挨拶は、「~の候(こう)」や「~のみぎり」の枕詞のようにして11月の季語を取り入れるとよいでしょう。上述したように、11月の上旬は9月の初秋から続いてきた秋が終わる時期なので「晩秋の候」「暮秋の候」「深秋のみぎり」などが代表的な時候の挨拶となります。
ビジネスシーンや上司へのメールだけでなく、お友達などへのカジュアルなお手紙なら「秋も一段と深まり」「ゆく秋の寂しさ身にしみるころ」などもおすすめの時候の挨拶です。
時候の挨拶にも使える11月の季語【中旬】
11月中旬は、秋が終わり冬を迎える立冬の時期です。冬の始まりの時期なので、寒さに対する言葉も数多く季語になっています。また、「酉の市」や「新嘗祭」のような年中行事、宮中行事もこの時期の季語です。
また、例年11月中旬から始まる大相撲の「九州場所」も季語になっています。時候の挨拶でも「向寒(こうかん)」や「初霜(はつしも)」というように、寒さに向かっていく様子を表す言葉がよく使われています。
11月中旬の季語が示す天候や気候の言葉
それでは、11月中旬の季語となっている天候や気候の言葉を見ていきましょう。秋が終わり冬を迎えるということで「冬めく」という季語があります。自然の様子や町の様子、空気なども冬らしくなることを指す言葉です。
人の服装やしぐさにも冬を感じることがあるでしょう。けれど、まだ本格的な冬ではないため「冬浅し」という季語もあります。木々の紅葉は落葉し始めていますが、時折春のような温かい「小春日和(こはるびより)」の日もある、そんな頃の季語です。
11月中旬の季語が示す生物や植物の言葉
11月中旬の季語の中にも、この季節を表す生物や植物の言葉も数多くあります。この時期にとれる「柳葉魚(ししゃも)」や「初鱈(はつたら)」は、初冬の季語です。渡り鳥が渡ってく様子を表現する「鳥渡る」という言葉も、11月中旬の季語です。
また、11月中旬の季語になっている植物の言葉は、「茶の花」「山茶花(さざんか)」「冬椿」など。冬は花が少ない時期ではありますが、それでも健気に花をつける様子は、胸を打ちますね。
11月中旬の季語が示す生活全般の言葉
最近では「ボジョレーヌーボー」も11月中旬の季語に仲間入りを果たしたとされています。もともと11月上旬には「新酒」という季語がありますが、中旬に解禁日を迎えることが多い「ボジョレーヌーボー」は中旬の季語に分類されることが多いようです。
また、11月15日ごろに行われる「七五三」やそこで子供たちが手にする「千歳飴(ちとせあめ)」も、11月中旬の季語の1つとして人気があります。
11月中旬の季語を使った時候の挨拶の言葉
11月中旬の季語を使った時候の挨拶は、「孟冬(もうとう)の候」「立冬の折」などが代表的な時候の挨拶となります。「枯れ葉舞う季節となり冬の気配を感じる折」のような表現も素敵です。
ビジネスシーンや上司へのメールには、時候の挨拶の後にお手紙を送るお相手の安否を気遣う一文を入れるようにしましょう。たとえば、「小春日和に喜びを感じる向寒の候、皆様におかれましては、お変わりなくご健勝のことと拝察いたしております。」などがおすすめです。
時候の挨拶にも使える11月の季語【下旬】
11月下旬の季語には、二十四節気の「小雪」があります。雪は降るものの、まだそれほどの積雪量にはならないという頃合いを指す言葉です。雪はちらつく程度であっても、寒さはいよいよ冬らしく本格的になってくる時期です。
「焚火(たきび)」「炭火(すみび)」といった暖をとる言葉や、「インフルエンザ」といった流行り風邪の名前も最近は11月下旬の季語になりました。江戸時代に誕生して以来、愛され続けている俳句ですが、季語はその時代時代に合わせてアップデートしているのです。
11月下旬の季語が示す天候や気候の言葉
11月下旬の季語となっている天候や気候の言葉には、冬の日の短さを表す「短日(たんじつ)」があります。冬至に向けて、毎日少しずつ日中時間が短くなっていう様子を意味する言葉です。
また、11月中旬の季語として紹介した「小春日和」に似ていますが、冬がもっと本格化してからの穏やかな一日は「冬日和(ふゆびより)」と称されています。木の枝に最後まで残っていた葉を吹き散らすような風は「こがらし」です。「凩」または「木枯らし」と表記されます。
11月下旬の季語が示す動物や植物の言葉
まだ体がしっかりできていない鮎(あゆ)の稚魚を指す言葉「氷魚(ひお)」は、11月下旬の季語の1つです。この「氷魚」は、その昔、初秋から大みそかにかけて宮中に貢がれていました。
そこから「氷魚の使い」という季語も生まれています。絶滅危惧種でもある「寒蘭(かんらん)」は、常緑広葉樹林やモミの木などに自生するランです。また、ふろふきやおでんにしておいしく食べる「大根」も、この時期の季語として知られています。そこから派生して「大根洗う」「大根引き」なども11月の季語です。
11月下旬の季語が示す生活全般の言葉
11月下旬には、有名人の命日があります。まず、明治の小説家で5000円札の肖像にもなっている樋口一葉の命日が、11月23日。この日は「一葉忌」と呼ばれていますが、この言葉も11月下旬の季語の1つです。
11月25日は、小説家・三島由紀夫の命日で「三島忌」という言葉が季語になっています。浄土真宗の祖とされる親鸞の命日は「御取越(おとりこし)」と呼ばれ、本山では法要が営まれるそうです。
11月下旬の季語を使った時候の挨拶の言葉
11月下旬の季語を使った時候の挨拶は、「小雪(しょうせつ)の候」「初雪の候」などが代表的な時候の挨拶となります。ビジネスシーンや上司へのメールだけでなく、お友達などへのカジュアルなお手紙なら「日ごとに寒さが身にしみる頃」「冬紅葉が鮮やかさを増し美しい季節」などもおすすめの時候の挨拶です。
「向寒のみぎり、健康には十分にご留意なされ、さらにご活躍されますことを祈念申し上げます。」のように結びに季語を使うこともできます。
11月の季語を時候の挨拶に上手に使おう
季節を感じさせる言葉である季語は、俳句に必ず使用するというルールのほかに、時候の挨拶にも使われます。秋の終わりから冬の始まりの時期である11月の季語は、気候や天気を表す言葉だけではありません。
その時期にとれる魚や活動が活発になる鳥や動物、花を咲かせたり実をつけたりする植物など、いろいろな分野からピックアップされています。さまざまな言葉で季節を表現しようとする季語には、美しい言葉もたくさんあるので、ビジネスシーンでの時候の挨拶にも上手に使ってみませんか。
こちらもおすすめ☆
新規登録
ログイン
お買い物