そもそも季語とは?
季語とは、春夏秋冬の季節感を表すための言葉。俳句や連歌にはなくてはならないもので、必ず1つは季語を入れるというルールがあります。
現在、季語に分類される言葉は5000個以上。昔から使われている趣のある季語から、小さな子どもでも使いやすい現代風の季語までさまざまなものがあります。季語を入れることで情景が浮かび、味わい深い一文に。
手紙の書き出しや締めくくりなどにも季語を用いると、季節感を感じる素敵な文面になります。
【冬の寒さ】を表す美しい季語・言葉
ここでは「冬の寒さ」を表現する美しい季語や言葉を集めました。日本の厳しい冬の寒さを連想させるような季語には、響きや意味がかっこいい言葉もたくさん。
季語を使った俳句の例文もあわせてご紹介します。
寒の内(かんのうち)
「寒の内」とは1年で最も寒さが厳しいと言われている期間のこと。寒の入り(かんのいり)と呼ばれる1月5・6日ごろから、寒明け(かんあけ)と呼ばれる2月4日ごろまでの約30日間を指します。
寒の内は寒中(かんちゅう)とも呼ばれ、「寒中見舞い」を送るのもこの時期。日本各地ではこの時期に最低気温が観測されます。
寒の内は晩冬(冬の終わり)の季語として俳句に登場することも。仕事始めで忙しい人も多く、体調をしっかりと整えたい時期です。
空風(からかぜ)
「空風(からかぜ)」とは、晴れた冬の日に吹く乾いた強風・北風のことです。特に関東地方の群馬県付近に吹く風を指します。
漢字で「乾風」と書くこともあり、地方によっては「からっかぜ」と読まれる場合も。
日中の14時〜16時ごろに吹き荒れ、夕暮れ時になるとパタっと止むのが特徴です。「空風と日雇いは日暮れまで」ということわざもあります。
カラカラに乾いた強風は氷のように冷たく感じることもあるようです。空風は冬の季語として俳句に使われています。
寒月(かんげつ)
「寒月(かんげつ)」とは、寒さが厳しい冬の夜に冷たく光輝く月の意味。冬の月を総じてこう呼ぶこともあります。
白みを帯びて冷え冷えと冴えわたる月光は、夏の月と比べ冷たいイメージです。
凛としたそのかっこいい佇まいは、冬の季語として俳句にもたびたび登場。江戸時代の俳人・与謝蕪村は、小さなお寺の上で天高く輝く冬の月を、情感豊かに詠んでいます。
「寒月」という漢字を見るだけで真冬の澄んだ夜を連想できる、美しい日本語ですね。
例句
寒月や 門なき寺の 天高し
与謝蕪村
出典:https://haiku-textbook.com/
冬の朝
冬の寒さを表す美しい季語には、「冬の朝」という言葉もあります。夜の寒さが残る冬の早朝の様子を詠む際に、よく使われる季語です。
道路に氷が張っていたり、雪が一面に積もっていたりと、「冬の朝」という言葉にはそれだけで情景が浮かぶような表現力があります。
同様の意味を持つかっこいい季語、「冬暁(ふゆあかつき)」「冬曙(ふゆあけぼの)」という言葉もぜひ一緒に覚えてみましょう。
例句
烏ばかり静かにならぬ冬の朝
曾良そら
出典:https://idea1616.com/
【冬の植物】を表す美しい季語・言葉
ここでは「冬の植物」にまつわる美しい季語や言葉を集めました。冬の景色に彩りを添える綺麗な花や植物は、どのように季語として使われているのでしょうか?
冬紅葉(ふゆもみじ)
初冬の季語である「冬紅葉(ふゆもみじ)」とは、周りの紅葉がすでに枯れたあとに色付きはじめる紅葉のこと。冬の始まりを彩る鮮やかな情景を連想させる、美しい日本語ですね。
同じような意味合いで「残る紅葉(のこるもみじ)」「残り紅葉(のこりもみじ)」という言葉も。周囲から遅れをとって色付く姿が逆にもの悲しい、という意味で使われる場合もあるようです。
帰り花(かえりばな)
「帰り花(かえりばな)」とは、冬の始まりの暖かな日に季節はずれに咲く花のこと。桜・桃・つつじ・梅などがあります。
忘れた頃に花を付けるという意味から「忘れ花(わすればな)」という別名も。
帰り花は初冬の季語として俳句に登場し、その使われ方にはさまざま解釈があります。
季節を勘違いして咲いてしまった花・厳しい寒さを乗り越える勇気をくれる花など、その一言には俳人のいろいろな思いが込められているのです。
例句
みよし野や 余所の春ほど 帰り花
加賀千代女
出典:https://jhaiku.com/
寒桜(かんざくら)
「寒桜(かんざくら)」とは、寒い時期に開花する早咲きの桜のこと。九州や沖縄など暖かい地域で見られる「緋寒桜(ヒカンザクラ)」という種類の桜です。
その綺麗で美しい響きから、冬の季語として俳句にもよく使われます。「冬桜(ふゆざくら)」という別名で俳句に登場することも。白やピンクの綺麗な花は、冬の俳句に彩りを加えるようです。
明治から昭和にかけて活躍した俳人・高濱虚子も寒桜を季語とした俳句を詠んでいます。
例句
山の日は 鏡の如し 寒桜
高濱虚子
出典:http://nobu-haiku.cocolog-nifty.com/
【冬の食べ物】を表す美しい季語・言葉
ここでは「冬の食べ物」にまつわる美しい季語や言葉を集めました。日本の冬にはおいしい食べ物がたくさん。冬の寒さを癒す、体が温まるような食べ物は季語としてもよく使われています。
今回は4つをご紹介しますが、このほかにも「焼き芋」「みかん」など気軽に使いやすい食べ物の季語がたくさんあるので、いろいろ探してみてくださいね。
牡蠣(かき)
寒い時期になると食べたくなる「牡蠣」は、冬の食べ物を表す季語。三冬(さんとう)の季語として俳句に使われます。
三冬とは初冬・仲冬・晩冬の3つをまたぐ冬の時期のこと。現代の11月〜1月ごろを指しています。
冬は牡蠣の土手鍋や酒蒸しなど、体が温まるおいしい牡蠣料理がいっぱい。日本では縄文時代から食べられていたという説もあり、日本人に古くから馴染みのある冬の食材と言えそうです。
おでん
冬の定番料理「おでん」も冬の季語。子どもから大人まで馴染みのある言葉で、小学生の俳句にも使いやすい季語です。
室町時代から食べられていたおでんは、江戸時代になるとファストフードとして親しまれるようになりました。
おでんはもともとこんにゃくだけの「味噌田楽」だったそう。その後関東の屋台を経て全国に広まり、地方ごとの味で根付いていきました。
おでんという言葉が俳句に入っているだけで、なんだかホッとするイメージですね。
河豚汁(ふぐじる)
今ではあまり馴染みのない「河豚汁(ふぐじる)」は、江戸時代に親しまれてきたふぐ料理。冬の季語になっている河豚汁は、ふぐの身やネギなどを入れたお味噌汁のことです。
ふぐは毒を持っていることから、一か八かの覚悟を決めて食べていた人も多いのだとか。
日本を代表する俳諧師・松尾芭蕉は、「河豚汁を食べてドキドキしていたが、翌日になっても何事もなくホッとして、心配していたのがバカらしい」という気持ちを俳句に詠んでいます。
例句
あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚汁
松尾芭蕉
出典:https://haikukigo.lalalan.com/
湯豆腐(ゆどうふ)
寒い季節の定番料理「湯豆腐」も、冬の季語として俳句に入れることができます。体が温まり素材のおいしさを味わえる湯豆腐は、日本の平和な食卓をイメージさせる家庭料理。
昭和の時代に活躍した俳人であり小説家の久保田万太郎も、「湯豆腐」を使った俳句を詠んでいます。湯豆腐の湯気を命のはかなさに例えたこの句は、自身の代表作と評されることも。
この句を詠んだ約半年後に、久保田万太郎は赤貝を喉に詰まらせ急逝しています。
例句
湯豆腐や いのちのはての うすあかり
久保田万太郎
出典:https://haiku-textbook.com/
【冬の情景】を表す美しい季語・言葉
ここでは「冬の情景」を表す美しい季語や言葉を集めました。その言葉を聞くだけで、冬の空気をイメージするような綺麗な季語がたくさん。手紙などでの時候の挨拶としても使いやすいので、ぜひ覚えてみてください。
雪
冬の美しい季語として定番の「雪」も、数々の俳句に使われてきました。「雪」の一文字が入るだけで、その句全体が一気に冬めいてくるようですね。
「粉雪」「雪景色」など「雪」が入った言葉もたくさん。同様に「樹氷」「氷点下」など「氷」を使った季語も、素敵な冬の情景を連想させます。
小林一茶は、空からふわりふわりと舞い落ちる雪をうまそう(おいしそう)だ、と表現しています。穏やかな雪の一日が思い浮かぶような、素敵な一句です。
例句
むまさうな 雪がふうはり ふはりかな
小林一茶
出典:https://haiku-textbook.com/
冬日和(ふゆびより)
「冬日和(ふゆびより)」とは、冬の穏やかな晴れた日のこと。12月上旬以降に使われることが多く、寒い冬の季節の合間にあるポカポカした1日のことを指す冬の季語です。
同じような意味で「冬晴れ(ふゆばれ)」や「冬麗ら(ふゆうらら)」など美しい響きの言葉があります。
ちなみに「小春日和(こはるびより)」という言葉は、11月下旬〜12月上旬にかけての晴れた日に対して使われる季語。春を表す季語ではありません。
風花(かざはな・かざばな)
「風花(かざはな・かざばな)」とは、冬の晴れた空に雪が花びらのように降る様子を表した言葉。山に積もった雪が風に飛ばされて、舞い散る様子を言う場合もあります。
なんとも幻想的で美しい情景を表しているこの言葉。高浜虚子は、風まかせでしか進めず、儚く消えてしまう風花の様子を「かなし」と表現し俳句に詠んでいます。
例句
風花の今日をかなしと思ひけり
高浜虚子
出典:https://idea1616.com/
枯野(かれの)
「枯野(かれの)」とは、草花が枯れてそっとたたずむ冬の野山の様子を表した言葉。冬の季語として使われ、冬の時期の寂しい山々の景色について情感を込めて表したいときに入れられます。
草木が枯れ果てて色をなくした山々はもの悲しい印象がありますが、一方で、耐えながら春をじっと待つような趣のあるかっこいい様子も感じられます。
例句
遠山に 日の当たりける 枯野かな
高濱虚子
出典:https://haiku-textbook.com/
美しい冬の季語・言葉を使った手紙の文例
最後は美しい冬の季語や言葉を使った手紙の例文をご紹介します。今回はビジネス文書や目上の人への手紙に使える言葉と、カジュアルな手紙に使いやすい季語の2種類をピックアップ。
どちらもサラッと加えることで、冬の訪れを感じられる素敵な手紙になりますよ。例文を参考にしてみてください。
初雪の候(はつゆきのこう)
かしこまったビジネスの挨拶にも使えるのが「初雪の候」。「初雪の候」は「今年も初雪が降る季節となりましたね」という意味です。
初雪は住んでいる地域によっても時期が異なり、使うタイミングに迷ってしまうことも。一般的には12月中旬以降の冬至の辺りから使うのがよいでしょう。
例文としては「拝啓 初雪の候、〇〇様におかれましてはますますご活躍のことと存じます。」など、文頭に使われます。
クリスマスイルミネーション
カジュアルな手紙には、クリスマスにちなんだ季語を入れるのも◎。街を素敵に彩る「クリスマスイルミネーション」も、冬を感じられる季語としておすすめです。
例文としては「クリスマスイルミネーションが輝く季節となりました。」など、文頭の挨拶として入れるとよいでしょう。
近頃では11月頃からクリスマスグッズがお店に並び、ツリーが点灯しはじめることも。しかしながらクリスマス関連の季語はやはり、12月上旬〜中旬頃に使うのが無難です。
美しい冬の言葉で季節の表現を豊かにしよう
今回は美しい冬の季語や言葉を一覧でご紹介しましたが、いかがでしたか?聞いただけで日本の冬を連想させるものや、美しい冬の情景が浮かぶ綺麗な季語がいろいろありました。
俳句などに昔から使われる季語や言葉には、日本の冬をイメージさせる味わい深くかっこいいものがたくさん。親しみやすいカジュアルな季語は、子どもにも使いやすいですね。
今年の冬は、日本語ならではの美しい季語を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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