そもそも季語とは?
季語とはどういうものを指し、どんなときに使われるのでしょうか?さまざまな季語をご紹介する前に、季語そのものについて解説します。
季語とはどういう意味?
季語とは、俳句や連歌などに使われる季節を表す語句のことです。季語の原型は鎌倉時代にできたとされており、現在は5,000以上の季語があるといわれています。
季語の大きな役割は、季節の象徴。例えば「紅葉」は秋の季語で、黄色や赤に色づいた美しい山々を連想させます。「紅葉」という短い季語を使うだけで季節の変化を感じられ、表現に深みが増すのです。
季語は以下のような場面で使用できます。
たとえ俳句を詠む習慣がなくても、季語を知ると手紙や会話における日常表現が豊かになるでしょう。
《自然・風景》を表す美しい秋の言葉・季語
ここでは自然や風景を表す秋の言葉や季語を集めました。聞くだけで、美しい秋の自然をイメージさせるような言葉をご紹介します。
美しい秋の言葉を知って、自然の風景を思い描いてみましょう。
山粧う
「山粧う(やまよそおう)」とは、秋に山が紅葉で色づく様子を表現した言葉です。秋の季語として俳句でも多く使われます。「山粧う」は赤色や黄色で化粧をした雰囲気が出ており、秋の山を上手く表現した美しくおしゃれな言葉です。
山は季節で表情を変えるため、冬は「山眠る」、春は「山笑う」、夏は「山滴る」という表現も。また「山粧う」以外にも「山彩る」や「粧う山」など、秋の山を表す美しい言葉があります。
例句
楢くぬぎ枝染め分けて山粧ふ
荒 久子
秋の声
「秋の声」は風や虫の音などを指し、物寂しい様子を表現するときによく使われる美しい秋の言葉。秋の声は季語としても使える単語で、江戸時代中期に俳人や画家として活躍した与謝蕪村の俳句にも登場しています。
関連した季語として「秋声(しゅうせい)」や「秋の音」なども、似たような意味合いで使える秋の言葉です。
例句
帛を裂く琵琶の流れや秋の声
与謝蕪村
秋高し
「秋高し」は、澄んだ秋の空気によって空が高く感じられる様子を表現した秋の言葉。空が澄みわたる10月下旬頃に使われる季語です。同じような意味合いで「天高し」や「空高し」という表現も、秋の季語として多用されます。
村上鬼城の俳句には「痩馬のあはれ機嫌や秋高し」というものも。秋の空のせいか、痩せた馬が機嫌よく見えたことを詠んだ句です。
例句
秋高し雲より上を鳥かける
正岡子規
秋風
書道でも人気の文字である「秋風」は、秋らしい涼しい風を意味する秋の季語。季節を感じられる秋の言葉です。「心地よい秋風が吹き涼しさが感じられるようになりましたが、いかがお過ごしでしょうか?」というように、手紙の書き出しの挨拶としても使われます。
秋の風物詩とも言える秋風は、文字を見るだけで涼しげな風を感じられそうです。
例句
秋風に折れて悲しき桑の杖
松尾芭蕉
紅葉
秋の風物詩として知られる「紅葉」も秋の季語。木の葉や山が黄色・赤などに美しく色づく様子を表現した言葉です。「紅葉といえば秋」と瞬時に思いつくほど、日本人にはなじみ深い単語ではないでしょうか。
「こうよう」「もみじ」と2種類の読み方をするのが一般的です。紅葉には「初紅葉(はつもみじ)」「雑木紅葉(ぞうきもみじ)」「薄紅葉(うすもみじ)」など、さまざまな種類が。どれも季語として使われる秋の言葉です。
例句
山暮れて紅葉の朱を奪うけり
与謝蕪村
《天気》を表す美しい秋の言葉・季語
ここでは天気を表す秋の言葉を集めました。秋の言葉には天気の変化や様子をイメージさせる綺麗な表現もたくさん。
楽しい行事も多く天候が気になる秋は、天気にまつわる単語をおしゃれに使いこなしてみましょう。
秋晴れ
「秋晴れ(あきばれ)」は、空気が澄んで晴れている天気を表現した単語。基本的に10月中旬から11月頃に使われる言葉です。
晴れのイメージが強い「秋晴れ」という言葉ですが、不安定な天気の際に使われる場合も。秋の天気は低気圧と高気圧が交互にやってくるため、変わりやすいのが特徴です。
「女心と秋の空」という慣用句は、移り変わりが激しい状態を表現するときに使われます。
例句
秋晴やましろの樺はまつたけれ
石橋辰之助
秋時雨
「秋時雨(あきしぐれ)」は秋の終わりにパラパラと降るにわか雨、という意味の単語。冬の季語である「時雨」に秋を付けた「秋時雨」は、晩秋の季語としてよく使われます。
パラパラと降ってすぐに止む雨をイメージするとわかりやすいでしょう。秋が終わり冬が近づいてくる頃の天候を、綺麗な言葉で表現しています。
例句
硝子戸の外の眺めや秋時雨
久保田万太郎
鰯雲
「鰯雲(いわしぐも)」とは秋に見られる雲の種類のひとつで、正式名は「巻積雲(けんせきうん)」。イワシの群れが泳ぐさまに似ていることからこう呼ばれ、「うろこ雲」という別名もあります。
鰯雲が出た後には嵐が来ると言われ、天気が崩れる前兆です。他にも「鯖雲(さばぐも)」や「羊雲(ひつじぐも)」など、雲の様子を表す秋の言葉がいくつかあります。
例句
いわし雲 天の浮き橋 月渡る
瀧井孝作
稲妻
「稲妻(いなづま)」も天気を表す秋の言葉のひとつ。空を縦に切り裂くように走る電光により稲が実ると言われたことから、秋の季語として使われています。
稲妻と似たような秋の言葉に「稲光(いなびかり)」がありますが、こちらも秋の季語。「雷」というと夏の風物詩のような気もしますが、秋の雷には「稲」の漢字がよく使われています。
例句
稲妻に色失へる灯かな
上野泰
秋曇
「秋曇(あきぐもり)」とは秋の季節の曇り空を意味する単語。秋の季語として俳句などによく使われています。ころころと変わりやすいと言われる秋の天気。晴天の日と曇りの日が数日おきに入れ替わります。
「秋曇り」に対して、気持ちのよい秋晴れの天気を指す単語が「秋麗」。「あきうらら」や「しゅうれい」と読みます。
例句
滝上や大瀬のよどむ秋曇り
飯田蛇笏
《花・植物》を表す美しい秋の言葉・季語
ここでは花や植物を表す秋の言葉をピックアップ。花や植物は季節をイメージしやすく、季語にもぴったり。花の季語を加えると、俳句がいきいきしてくるようです。
秋の花や植物を知っておくと、手紙などにもサラッと使えます。
金木犀
秋を代表する花「金木犀(キンモクセイ)」は、季語としても使われます。秋の風物詩とも言える、秋を代表する花のひとつです。
香りが特徴的な金木犀は、時候の挨拶にも使える秋の言葉。「金木犀のさわやかな香りが漂いはじめましたが…」というように、手紙の書き出しにもぴったり。晴れた秋の日ののんびりした風景が浮かんでくるようです。
例句
好日や金木犀の花いきれ
鷹羽狩行
錦秋
「錦秋(きんしゅう)」とは、紅葉で木々が錦(にしき)のように色鮮やかになる様子を表現している秋の季語。「錦」とは、さまざまな色の糸を使って綺麗な模様を織った織物のことです。
他にも「錦」には「美しい」や「多彩な」という意味が。「錦秋」という文字だけで秋の美しさが伝わってくるようです。10月から11月頃の紅葉が綺麗な時期に使われる綺麗な秋の言葉。「錦秋の候」という表現で、手紙の書き出しにも使われます。
例句
錦秋となる雲巖寺履を入れず
阿波野青畝
菩提樹
「菩提樹(ぼだいじゅ)」は、インドや中国を原産とする植物。菩提樹の実は秋の季語、花は夏の季語として使われます。高い木に咲く黄色い小さな花を、寺院などで見かけたことがあるのではないでしょうか?
樹齢の長い菩提樹は天然記念物に認定されているものも。秋の季語にもなっている菩提樹の実は浄化作用があるとされており、数珠を作る際の素材となっています。
例句
菩提樹の実を拾ひをる女人かな
高濱虚子
桔梗
「桔梗(ききょう)」は、秋の七草としても知られる紫色の綺麗な花。夏に見かけることも多い桔梗ですが、初秋の季語として使われています。種類によっては6月頃から咲き始めるものも。
桔梗を季語として使った俳句には、夏の終わりを感じさせる少し寂しげな句も見られます。桔梗の花言葉は「永遠の愛」「誠実」「気品」など。上品な見た目に似合う花言葉です。
例句
かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ
久保田万太郎
白粉花(おしろいばな)
公園や家庭の庭などでも馴染みのある「白粉花(おしろいばな)」は、仲秋(ちゅうしゅう)の季語。仲秋とは9月初旬〜10月初旬ごろまでを指します。
夕方の時間帯になると白やピンクの可愛い花をたくさん咲かせ、翌朝にはしおれてしまうのが特徴。なんだか切なさを感じてしまいますが、一瞬のためにいきいきと咲く姿に元気をもらえます。
例句
白粉花の夕咲く香なり二日月
遠藤はつ
英語の美しい秋の言葉
ここでは英語で表現する美しい秋の言葉をピックアップ。英語にも日本語と同じように秋の季節を感じられる単語や表現があります。
今回は簡単な英単語を使った表現を3つご紹介。覚えやすいフレーズなので覚えて使ってみてください。秋の言葉を表すかっこいい英語表現を見ていきましょう。
fall is in the air.
『fall is in the air.』は、「秋めいている」と意味の英語表現。「空気中に秋がある」という直訳から、空気中に秋を感じられるという趣のある美しい意味合いになります。
他には『I feel fall.(秋を感じる)』という表現も。『I feel summer.』というように、秋以外の季節でも使える言い方です。
clear skies of autumn
『clear skies of autumn』は「澄み渡る空」という意味の英語表現。日本語の「秋晴れ」という表現に近い単語です。
ちなみに秋を意味する単語には『fall』と『autumn』の2種類の言い方が。基本的には『fall』はアメリカ英語、『autumn』はイギリス英語と覚えておくとよいでしょう。アメリカでもフォーマルな場所では『autumn』が使われる場合も多いようです。
turn over a new leaf
『turn over a new leaf』とは「心機一転する」という意味の慣用句です。直訳すると「新しい葉をめくる」となりますが、ここでの『leaf』とは本のページのこと。「ページをめくって気持ちを新しくする」というような意味合いです。
夏が終わり秋が来ると、心機一転、何かを始めたくなる人もいるのではないでしょうか。
この秋は、Why don’t you turn over a new leaf?
美しい秋の言葉を使った手紙の文例
ここでは、手紙に使える美しい秋の言葉をピックアップ。手紙の書き出しや結びに入れる綺麗な表現をご紹介します。
ひと言で秋と言っても上旬・中旬・下旬では見える風景も変わり、使える時候の挨拶も変化するもの。どの時期に使える気候の挨拶なのかも解説します。秋の言葉を手紙に加えて、秋の趣を楽しみましょう。
初秋の候
「初秋の候(しょしゅうのこう)」は、手紙の書き出しに使える時候の挨拶です。「候」は季節や気候という意味。「初秋の候」とは秋の始まりを意味しており、立秋である8月7日頃から9月7日頃まで使える秋の言葉です。
例としては「初秋の候残暑もようやく和らぎ秋の訪れを感じる頃になりましたが…」といった使い方が◎。「初秋の候」と同じ時期に使える挨拶として、「残暑の候」や「納涼の候」などがあります。
秋の夜長
プライベートな手紙などでカジュアルに使える単語が「秋の夜長」です。秋分の日を過ぎ、昼夜の長さが逆転する頃から使える時候の挨拶。過ごしやすく穏やかな秋の夜を思わせる、美しい秋の言葉です。
「秋の夜長、いかがお過ごしですか。」というように手紙の書き出し部分に使うのが一般的。その他「スポーツの秋」「紅葉」「銀杏」など、秋の風物詩を織り交ぜるのもおすすめです。
美しい秋の言葉で季節の表現を豊かにしよう
今回は美しい秋の言葉を特集しましたが、いかがでしたか?秋の言葉には、風景や天気を表現するような美しい単語がたくさん。俳句の季語や手紙の挨拶文などにもよく使われます。
美しい秋の言葉を知れば、より一層秋の魅力に気づけるはず。読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋など魅力あふれる秋の季節を、美しい言葉で表現してみてください。
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