短いからこそ感動するおすすめの短編集
短編小説は、一般的に原稿用紙10枚から80枚程度の長さです。短いからこそ、ストーリーを凝縮し言葉を削り、結晶のように研ぎ澄まされていきます。
毎日忙しく読書時間をなかなか持てない人にも、短い時間で読み終えることができる短編小説はおすすめです。ここでは、ファンタジー・恋愛・ミステリーのジャンル別に、おすすめの短編集を見ていきましょう。
おすすめの短編集《ファンタジー》
心地よい酩酊感のあるファンタジー短編集
まずおすすめしたい短編集は、ファンタジー小説を集めた作品です。『酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす』は、タイトルからして魅力的。
酒を愛し酒に愛されているという素敵なキャッチフレーズを持つ作家・酒村ゆっけさんの短編集です。
お酒を飲みながら、時には飲まれながら綴られたかのような不思議な酩酊感が楽しめるおすすめのファンタジー小説が10作品収録されています。
疲れた心を癒してくれるファンタジー短編集
シリーズ3作まで出版されている望月麻衣さんによる連作短編集の1作目『満月珈琲店の星詠み』も、おすすめのファンタジー小説です。
満月の夜にだけオープンする不思議な珈琲店の店主は、人語を解する猫。
本格的な占星術で星を詠み、お客さんを癒すというファンタジー日常譚を描いた短編小説が3篇収められています。桜田千尋さんの珠玉のイラストもお見逃しなく。
そっと背中を押してくれるおすすめの短編集
続いても、猫が重要な役どころの小説が収められた連作短編集をおすすめします。
青山美智子さんの『猫のお告げは樹の下で』は、読後感がほっこり幸せな気分に包まれる物語。
神社の猫ミクジがよこすお告げによって、失恋した女性、娘とうまくいっていない父親、悩める大学生などが救われていきます。
ミクジに会いたくなる人、続出中です。
新世代ショートショート作家のデビュー短編集
続いてのおすすめは、田丸雅智さんによる『夢巻』です。
読書家で知られるピースの又吉直樹さんが絶賛した新世代ショートショート作家のデビュー作としても注目を集めました。
ショートショートといえば、星新一さんが有名ですね。いわゆる短編小説よりもさらに短く、1話5分ほどで読めてしまうので通勤通学のお供にもおすすめ。
表題作は、くわえると子供のころを思い出す葉巻が吸えるシガーバーが舞台です。
人気作家によるおすすめの異色短編集
現代劇から時代物、SFにホラーにミステリー、さらに社会問題とさまざまな切り口で感動的な傑作を生み続けている作家・宮部みゆきさんの最新短編集『さよならの儀式』は、SF系やホラー系のファンタジー小説が収録されています。
子供の虐待やAIの進化、都市伝説にタイムスリップなどそれぞれの作品ごとのテーマが違うので、読書の楽しみが広がるのではないでしょうか。
おすすめの短編集《恋愛》
新時代の恋愛小説のアンソロジー短編集
続いておすすめする短編集は、恋愛小説です。登場人物に自分を重ねて、胸キュン気分を楽しむもよし、切ない恋愛に感動するもよし。
短編集はいろいろなシチュエーションの恋愛が楽しめるのでおすすめです。
『STORY MARKET 恋愛小説編』は、新進気鋭の作家の作品を6作品収録しています。新しい恋愛の形が描かれている短編集です。
映画も大ヒットの予感がする人気作家の短編集
村上春樹さんの『女のいない男たち』は、6つの短編小説が収録されています。
1作目の『ドライブ・マイ・カー」をベースに、『木野』『シェエラザード』も取り入れた映画は、カンヌ映画祭で4賞受賞。
アメリカのアカデミー賞でも4部門でノミネートされています。
どれも一般的な恋愛小説とはいいがたいものの、さまざまな関係性がじっくりと描かれた短編集です。同じ作家の『レキシントンの幽霊』もおすすめの短編集ですよ。
点と点がつながった時の感動がすごい短編集
続いてのおすすめも、大人気の作家さんによる短編集です。
作品の映画化が多い伊坂幸太郎さんの『アイネクライネナハトムジーク』は、時間も場所もあちらこちらに飛ぶので、最初はその世界観がつかみにくいかもしれません。
けれど、点と点がつながると、作品を貫くさりげなく不完全だけれど確かな愛情に感動する人が続出。
三浦春馬さん主演の映画化も必見ですし、いくえみ綾さんによるコミカライズもおすすめです。
嫌ミス系の濃厚な愛の世界を描く短編集
嫌ミスの女王とも称される人気作家・湊かなえさんの『サファイア』は、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ムーンストーン、サファイア、ガーネットと、宝石や貴石をタイトルに付けた恋愛小説が収められたおすすめの短編集です。
とはいえ、湊かなえさんらしく、一筋縄でいく恋愛ではありません。どれも長編小説にできそうなくらい濃厚な世界観が味わえる作品が揃っています。
直木賞受賞作家による恋愛短編集
島本理生さんの『あなたの愛人の名前は』は、全ての本好きさんにおすすめできる短編集ではないかもしれません。
この短編集に収められている作品は、恋愛をテーマにした作品ですが倫理に外れている恋愛も含まれているからです。
満たされているように見える人も心の中に満たされない部分を持っていることがあります。
誰もが人に傷つけられることもあり、傷つけることもある。そんな人生観も伝わってくる恋愛系短編集です。
おすすめの短編集《ミステリー》
2022年直木賞受賞の歴史ミステリー短編集
続いておすすめする短編集は、ミステリー作品です。2022年上半期の直木賞受賞作『黒牢城』は、新感覚の歴史ミステリーの連作短編集。
信長に反旗を翻した荒木村重をワトソン役に、牢にとらえていた織田信長の軍師・黒田官兵衛をシャーロック役に据えた安楽椅子探偵スタイルで、官兵衛が有岡城に捉えられていた1年間を描いています。
作者の米澤穂信さんは、青春ミステリーの旗手としても評価が高いのでそちらもおすすめです。
「コーダ」の手話通訳士が主人公の連作短編集
丸山正樹さんの『慟哭は聴こえない:デフ・ヴォイス』は、人気シリーズ第三弾の連作短編集です。
ろう者と聴者の間で橋渡しをする手話通訳士・荒井尚人が日常に潜むミステリーや謎に立ち向かっていきます。
「コーダ」と呼ばれる聾者の両親の間に生まれた聴者の子どもである尚人の視線は、どこまでも優しく真摯。
最新作『わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス』は短編集ではなく長編小説ですが、こちらもおすすめです。
気まずい密室劇を描くリアルタイム短編集
青崎有吾さんの『早朝始発の殺風景』は、もどかしさと気まずさが詰まっている青春の風景を切り取った短編小説が5作品収録されています。
どれも場面転換のないワンシチュエーション作品なので、読みやすいでしょう。さらに、それぞれリアルタイム進行になっています。
早朝始発の電車内、放課後のファミレス、部活の引退記念で訪れた遊園地の観覧車と、全て密室が舞台になったおすすめのミステリー小説です。
論理的な謎ときにこだわったミステリー短編集
続いてのおすすめ短編集は、2004年に単行本が発行され2007年と2021年に文庫化された西澤保彦さんの『パズラー謎と論理のエンタテインメント』です。
本格ミステリー作家として名を馳せている西澤さんらしく、収録された6作品はすべて論理的な謎ときにこだわっています。
同じ作家が日常の中の非日常を描いた、短編集『偶然にして最悪の邂逅』も読みごたえがありおすすめです。
720通りの読み方ができる短編集
直木賞作家である道尾秀介さんの『N』は、6つのミステリー作品が収録されている短編集ですが、読む順番によって720通りの読み方ができると謳われています。
さらに章ごとに上下反転で印刷されている全く新しい試みで作られたおすすめの短編集です。
理科教師、高校生、殺人犯、看護師、女性刑事とさまざまな登場人物が錯綜する世界観を楽しんでみませんか。
おすすめの短編集で素敵な読書タイムを
ファンタジー・恋愛・ミステリーの3ジャンルを描いた小説を収めた短編集をおすすめしました。字数の制限がある短編小説では、作家もすべてを描き切らず余韻を持たせた終わりになることもあります。
読者はその余韻の中で、いろいろと可能性を広げていく楽しみもあるのです。忙しくてなかなか本が読めないという人も、おすすめの短編集を手に取って素敵な読書タイムを過ごしてみませんか。
こちらもおすすめ☆
新規登録
ログイン
お買い物