あなたは「未婚で出産」することについて、どのようなイメージを抱いているでしょうか。また、未婚で出産することを選んだ女性たちには、どのような現実があるのでしょうか。
ここでは、「未婚で出産」することにおける問題点と、シングルマザーのための支援制度、また養育費などについても詳しくご紹介していきます。
「未婚で出産」は相当な覚悟が必要
「未婚で出産」することにおいて、世界的に見ると欧米などではさほど珍しくないことであるのに比べ、日本では未だ風当りが強いことが現実です。
皆婚習慣が根強く残る日本においては「結婚せずに子供を産む」ことについて、世間の目も厳しい傾向にあり、また女性のひとり親が満足に子育てをできる環境が整えられていない、という事実があります。
このような理由から、「未婚で出産」することにおいては、相当な覚悟が必要だということがわかります。自分だけではなく、出産する子供の人生をも巻き込むことですので、慎重な決断をする必要があると言えます。
「未婚の出産」で起こり得る問題
「未婚で出産」した場合に、懸念される問題について以下にまとめています。
経済的な問題
「未婚の出産」「シングルマザー」「母子家庭」のようなワードを耳にすると、おそらく誰もが「経済的な問題」を容易にイメージするのではないでしょうか。未婚で出産することにおいてまず最も大きな不安材料として一番に挙げられるのが、この経済的な問題です。
女性がたった一人で、子供を育てて生活していく経済力を十分に持っている人は、この日本にどれだけいるのでしょうか。ひとり親家庭の半数以上が、貧困層だと言われています。
社会的地位が高くて一人でも十分な収入を得られる人や、裕福な実家の支援を満足に受けられる、といった女性はごくごく一部でしょう。例えキャリアウーマンだった女性であっても、出産や子育てのために仕事に制限がかかり、十分な収入を得られなくなる状況に陥る可能性もあります。
「経済的な余裕があるかないか」が、かなり重要となってくるのが現実です。「未婚で出産」することは、経済的な余裕がなければないほどに、苦労することになるのは覚悟の上で決断しなければならないと言えるでしょう。
子供への影響
「片親しかいない」「母子家庭」であることが、生まれた子供の人生にも影響を及ぼすことになるでしょう。「父親がいない」ということは、今の日本では「普通・一般的ではない」ことであり、「ハンデを背負っている」状況だと周囲からは見られてしまいます。
「母子家庭だから貧乏」であることなどが、いじめへと繋がることも十分に考えられます。また、「父親がいない」ことについて思い悩んだり、家計を支えるために働きづめの母親と過ごす時間が少なく寂しい思いをしたりと、子供に及ぶ様々な影響が懸念されます。
「母子家庭が子供にとって不幸せである」とは一概に言えませんが、「ひとり親」であることで、自分だけでなく子供に降りかかる苦労も少なからずあるのだということを念頭に置いておくと良いでしょう。
一人で出産・育児をすることへの心身への負担
たった一人で出産・育児をこなしていくことについての、精神的・身体的な負担は大きなものになるでしょう。特に、経済的な余裕がなければないほどに、その負担は大きくなると言えますが、懸念される問題は経済的なことだけではありません。
例え母子家庭でなくとも、低所得の世帯は存在しています。しかし、それをたった一人で背負うのか、夫と二人で支え合っていくのとでは、精神的な負担の大きさに歴然の差があるでしょう。家計を共にするパートナーがいないことで、身体的なものだけでなく、精神的なダメージを受けやすい状況だと言えます。
最も恐れることとしては、シングルマザーとして生活を支える負担に押しつぶされ、子供への虐待に繋がってしまうケースです。「そんなことは絶対にあり得ない」と自分では思っていても、ひとたび精神を病んでしまうと自己のコントロールが難しくなります。全てを一人で抱えようとせずに、自分の両親や親戚、友人など「誰かに頼る」ことも必要だということを意識しておくべきでしょう。
出産・子育て、母子(ひとり親)家庭への支援制度
「子供を産んで育てること」、また「母子家庭であること」などで、受けられる支援はさまざまです。しかし、これは勝手に支援してくれるものではなく、自分で申し出や手続きを踏まなければなりません。少しでも経済的な負担を軽くするために知識として入れておくべき大切なことだと言えますので、項目別にご紹介していきます。
出産育児一時金
異常なく普通に出産する「自然分娩」は保険が適応されず、出産費用は自費になります。出産のための入院で総額60万ほどかかってしまうケースもありますが、国民健康保険または健康保険組合に加入している場合は、出産育児一時金として出産した子供一人につき42万円が支給されます。
また、帝王切開などの「自然分娩ではないケース」では保険適応となる部分が発生し、併せて医療保険の入院給付金や手術給付金も適応になる場合があります。加入している医療保険があれば保障内容をよく確認しておきましょう。
児童手当(旧名称:子ども手当)
児童手当(旧名称は子ども手当)は、母子家庭に限らず子供がいる全家庭を対象にした国の助成金です。0歳から中学卒業までの日本在住の子供が対象となり、支給される基本金額は以下になります。
- 0歳~3歳未満:一人につき月15000円(一律)
- 3歳~小学生まで:一人につき月10000円(第三子以降は15000円)
- 中学生:一人につき月10000円(一律)
支給される月は2・6・10月の年3回で、毎月ではなく4ヶ月分まとめての支給となります。
また、規定されている一定以上の世帯収入があり、所得制限がかかると上記の児童手当は支給されず、特例給付として月5000円が支給されます。
児童扶養手当(母子手当)
児童扶養手当は、母子家庭や父子家庭などのひとり親家庭を対象にした、地方自治体から支給される支援制度です。子供が0歳から18歳(18歳になって最初の3月31日)までが支給の対象となります。支給額は所得や子供の人数によって異なります。所得が高いと一部支給、もしくは支給の対象外です。
子供一人の場合
全部支給42290円、一部支給42280~9980円
子供二人以上の場合
第二子加算額:全部支給:9990円、一部支給:9980~5000円
第三子加算額:全部支給:5990円、一部支給:5980円~3000円
支給月は4・8・12月の年3回、4ヶ月分まとめての支給となります。
児童育成手当(東京都)
自治体によって、ひとり親家庭を対象とした支援制度を設けていることがあります。「児童育成手当」は東京都の制度名であり、子供一人につき月13500円が支給されます。
制度名や対象範囲、支給金額は違えど似たような支援制度は各自治体にも設けていることがありますので、自分の住まいの自治体に確認する必要があります。
ひとり親家庭の医療費助成制度
こちらも自治体によって助成内容はさまざまですが、ほとんどの自治体で実施されている制度です。
ひとり親家庭の18歳未満の子供の医療費が無料になったり、養育者である親の医療費の負担額も軽減されたりするなどの支援制度があります。
交通機関の割引
JRなどの交通機関では、ひとり親家庭を対象にした割引制度があります。JRでは児童扶養手当受給者とその同一世帯の人は、通勤定期券を3割引きで購入できます。また、都営交通の無料乗車券発行や公共バスの運賃割引制度などもあります。
未婚で出産した子供の戸籍と認知について
「未婚で出産」した場合に、生まれてきた子供の戸籍はどうなるのでしょうか。ここでは、子供の戸籍と「認知」について、解説していきます。
認知されないと子供の戸籍の父親欄が空白になる
未婚で出産し、父親である相手に「認知」されない場合、子供の戸籍は母親欄のみの記載になります。
母親姓になるのはもちろん、戸籍の父親欄は「空白」となります。
法的に子供と父親の親子関係を結ぶには、「認知届」を提出し、戸籍に明示する必要があります。
「認知届」は、まだ子供を出産する前(お腹の中にいる胎児の状態)でも提出が可能です。
認知を拒否された場合は「強制認知」という手段もある
子供の父親に「認知を拒否」された場合は、「強制認知」の手段を取ることもできます。
家庭裁判所での手続きとなり多少の費用はかかりますが、DNA鑑定もあるので認知を逃れることはできないでしょう。
この「強制認知」の場合は、子供を出産してから手続き可能となります。
認知されると「扶養義務」が発生する
子供の父親である相手と婚姻関係を結ばなくとも、「認知」手続きを行えば扶養義務が発生し、養育費を請求できます。
シングルマザーの経済的負担を軽くするためにも、未婚の出産であっても「認知」されることはとても重要であると言えるでしょう。
養育費について
シングルマザーにとってかなり重要事項だと言える子供の父親からの「養育費」ですが、その実態についてご紹介していきましょう。
養育費の金額や支払う期間
養育費の金額・支払い方法・期間は、基本的には双方の話し合いで決めることになります。
ただ「口約束」だけでは不安になりますので、途中で約束が守られなかった場合を想定して「書面」にして残しておくことが重要となります。
これで万が一養育費が滞った場合でも、泣き寝入りすることはなく強制執行が可能となります。
また、理由があって双方の話し合いが困難な場合、家庭裁判所に申し立てをして養育費の取り決めを行うことができます。
支払う期間については、子供が高校を卒業するまで・20歳(成人)まで・大学卒業までが多く、各家庭によってさまざまだと言えます。
双方の話し合いではなく家庭裁判所で取り決めをする場合は、基本的には「成人するまで」が一般的となります。
養育費の相場
養育費の金額については、基本的には双方の話し合いで取り決めをするので、その家庭によりさまざまですが、家庭裁判所に養育費の「算定表」があり、これを基準として決めることが多いでしょう。
母親(養育費を受け取る権利者)と父親(養育費を支払う義務者)の収入や子供の人数、また子供の年齢(0~14歳と15歳~19歳の二段階に分けられる)によって異なります。
【例】養育費を受け取る権利者の年収が200万円の場合の相場
〈子供が0歳~14歳〉
①支払義務者の年収:300万
サラリーマンの場合:月2~4万
自営の場合:月2~4万
②支払義務者の年収:600万
サラリーマンの場合:月4~6万
自営の場合:月6~8万
③支払義務者の年収:800万
サラリーマンの場合:月6~8万
自営の場合:月8~10万
〈子供が15歳~19歳〉
①支払義務者の年収:300万
サラリーマンの場合:月2~4万
自営の場合:月4~6万
②支払義務者の年収:600万
サラリーマンの場合:月6~8万
自営の場合:月8~10万
③支払義務者の年収:800万
サラリーマンの場合:月8~10万
自営の場合:月12~14万
相手に収入がない場合
「相手がやむを得ない事情により無職で収入がない状態」であった場合は原則として養育費を請求することができませんので注意が必要です。ただ、表面的には「無職」であっても、大きな財産や不労所得(株取引や不動産など)がある場合は請求することができます。
また、養育費の支払いを回避するために、養育費の取り決めの際にわざと会社を辞めるなど、支払い義務者が悪質な行動に出るケースがあります。
このような「働ける状態であるのにわざと働かない」ことが見られる場合は、過去の就労実績や平均賃金などを参考に養育費を推測して請求することが可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「未婚で出産」する、ということは、経済的負担や精神的・身体的な負担、また子供への影響など厳しい現実がたくさんあり、決して楽観的に捉えられるものではなく、簡単には決断できないことだと言えます。
ただ、未婚でも産むと覚悟を決めて決断したのなら、ご紹介した支援制度を駆使して少しでも負担が軽くできるように努めましょう。シングルマザーとして子供も守りながらしっかりと生き抜いていくために、日頃から情報収集をしたり自分の家族や友人知人に頼る機会を作ったりするのも大切です。
「未婚で出産」は、その人の人生において大変大きな決断となります。自分が一度決めたことには、決して「後悔」することのないようにしましょう。
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