近年、増加している熟年離婚。子どもが成人を迎えたタイミングや、就職したタイミングを機に離婚を切り出す女性が多いようですね。
まだ子どもが小さいけれど、このままでいったら熟年離婚をしそうと思っている方も多いのではないでしょうか?
そんな離婚で一番気になるのが、離婚したあとの生活ですよね。若いうちであれば今の仕事をそのまま続けたり、就職したりすることで生活費を稼ぐということもできますが、熟年離婚となるとなかなか難しいもの。
そこで今回は離婚をした後に気になる年金制度についてお話します。
離婚したときにもらえる年金って?
離婚を考えるときに離婚後の生活費をどうやって稼ぐかということは大きな問題ですよね。
「夫に対する愛情がなくなっていて、離婚をしたいけれど離婚後の生活が不安でできない」と考えている方は意外と多いのではないでしょうか?
確かに自分一人生きていくのでもパートなどの短時間労働では難しいのが現実です。
また子どもの進学や就職に差し支えがあると困るという理由で、離婚を思いとどまっている人も多いですよね。
この場合には熟年離婚ということになり、年齢的に就職などがより難しくなってきます。そんな熟年離婚を考えている方にとって気になるのが年金についてではないでしょうか?
離婚による年金分割って?
以前は専業主婦で会社や役所に勤めている配偶者に扶養されていた人、いわゆるサラリーマンや公務員を配偶者に持つ専業主婦の場合には、離婚したあとの老後には国民年金の基礎年金部分しか支給されていませんでした。
つまり離婚したあと旦那には会社や役所で得た給与を基にした厚生年金が支払われるにもかかわらず、別れた妻には厚生年金が一切支払われなかったのです。
しかし旦那が会社などで仕事に打ち込むことができるのは、専業主婦である妻が家事や育児などを請け負ってくれたためであり、そのサポートがなければ同じ給料を得られたかわかりません。
この考え方からできたのが年金分割です。
年金分割ができるものとは?
離婚後に分割することができるのは、結婚していた期間に納めた年金保険料の記録です。もし結婚届を出す前に事実上の婚姻関係にあった場合には、その期間も合わせて分割することができます。
年金分割には自分の国民年金加入期間が必要
しかし年金を受給するためには、国民年金に10年以上加入していることが必要となります。
こういわれると「扶養を受けていたので、国民年金を払っていないけれど・・・」と不安になる方もいるかもしれませんね。
でも婚姻によって配偶者に扶養されるようになった場合には、第3号被保険者として年金料の支払いが免除されているので、保険料は払っていませんが払ったことになるというシステムがあります。
手続きが行われているか確認しよう
第3号被保険者となるためには現在自分で手続きを行う必要はありません。
しかし第3号被保険者のシステムがスタートした1986年から数年は、自分で市役所に足を運んで手続きすることが必要でした。
この期間に結婚された方の中には、この手続きができていないため記録が漏れているという場合も。
もし不安な場合には「ねんきん定期便」に扶養されている期間が反映されているかどうかを確認してみましょう。
もし反映されていない・反映されているかわからない・ねんきん定期便が見当たらないというときには、自分の年金手帳を持って年金事務所で調べてもらいましょう。
本来このような届出は状況が変わってから2年以内に行わなくてはいけないのですが、漏れがある人が多かったため今は過去の分の届出もできるようになっています。
「届出をしていなかったから年金分割ができない」とあきらめる前に、まずは年金事務所にいって相談をしてみましょうね。
年の差夫婦は注意が必要
第3号被保険者でもう1つ気をつけたいポイントは、配偶者の年齢です。第3号被保険者になった場合、最大20歳から60歳までの40年間は年金を免除されますが、配偶者の年齢が65歳を超えると基本的に第3号被保険者の期間は終了となります。
つまり配偶者との年齢差が大きな場合には、第3号被保険者の期間だけでは加入期間が足りないということが起こってくるのです。もし年齢差のある配偶者と結婚している場合には、第3号被保険者の期間がどれくらいになるのか確認してみましょう。
2種類ある年金分割
実際に離婚にともなって年金を分割しようとする場合、どのような分割の比率や手続きがどうなるのか気になりますね。ここからは分割の比率を左右する2つの方法について話していきますね。
分割方法は?
年金の分割には、3号分割と合意分割の2つの種類があります。3号分割の3号とは第3号被保険者の3号をとっているもので、1号分割や2号分割などはありません。
分割方法の確認方法
3号分割と合意分割では手続きなどが変わってくるので、離婚を考えたときには自分が3号分割にあてはまるのかどうかを確認しておきましょう。
- 婚姻開始後に配偶者が厚生年金か共済年金に加入していたかどうか
- 婚姻の開始が平成20年3月31日以降かどうか
- 配偶者の厚生年金か共済年金の加入期間すべてにおいて第3号被保険者であったかどうか
上記の3つにあてはまれば、3号分割で可能となります。
ただし平成20年3月31日以前に婚姻が開始されていても、平成20年3月31日以前に厚生年金か共済年金に加入していた期間がないという場合には、3号分割ができます。
また障害年金の受給者や夫婦のいずれかが事実上の重婚状態であった場合などには、特別な判断が必要となりますので、専門家への相談が必要です。
3号分割とは?
3号分割は離婚の際に夫婦の合意がなくても分割の手続きができるもので、基本的に年金記録を50%ずつに分割することができます。
この場合、相手の合意が必要ないので一人で年金事務所などにおもむいて手続きをすることができます。
ただし、この分割の割合は決まっているので、50%以上分けたいというようなことはできません。
3号分割の手続きとは?
3号分割の場合、上で話したように相手の同意が必要ないので、分割してもらいたい方が必要な書類を用意して年金事務所などで手続きを行います。この手続きは離婚後にできます。この手続きを「年金分割の標準報酬改定請求」といいます。
3号分割の手続きの注意点
3号分割は相手と話し合うことが必要ないので、自分ひとりで手続きができ、分割の割合も決まっているので安心ですが、いくつかの注意点があります。
①離婚前に分割の話をしない
3号分割ができるとわかった場合、離婚をする前にこの話はしないでおきましょう。離婚競技が必要な場合、話さないほうが他の条件にだけ争点を絞ることができるというメリットがあります。
②手続きは早めに行う
3号分割の手続きは基本的に離婚後2年以内に行えばよいのですが、できるだけ早めに手続きを行うほうがおすすめです。
というのも、離婚したあとに元配偶者が死亡してしまった場合には、死亡した日から1ヶ月以内の手続きが必要となるからです。
離婚後に疎遠となり死亡したのを知ったのが、1ヶ月以上たってからだったという場合、期限が過ぎてしまい手続きができないということにもなりかねません。
離婚直後は色々と大変だと思いますが、手続きだけは早く済ませておくようにしましょう。
③事実婚の期間があるかどうかを確認する
婚姻届を出す前に事実婚の状況があったかどうかの確認しましょう。事実婚とは婚姻届は出していないけれど、同じ家に住み生活をともにしている場合のことです。
もしこの期間があるという場合には、住民票などの証明する書類を用意するようにしましょう。
この期間も分割に値する期間となり、最終的には支給される年金の額にかかわってきます。
合意分割とは?
3号分割では相手の合意がなくても手続きをして、年金分割をすることができましたが、3号分割にならない場合には当事者間で分割の比率を合意で決めることとなります。
3号分割の場合には離婚前にすることは何もなかったのですが、合意分割では手続きに時間がかかることが多いので、離婚する前から準備を進めておきましょう。
合意分割の手続きや手順とは?
合意分割の手続きは教唆一組合でも進めることができますが、より一般的な年金事務所での手続きの方法をご紹介します。
合意分割の手続きや手順1.「年金分割のための情報提供」の請求をする
最初に行うことは、合意分割に必要な「年金分割のための情報提供」の請求をすることです。請求には「年金分割のための情報提供請求書」と一緒に必要な書類を添えて年金事務所に提出しましょう。後日、「年金分割のための情報通知書」が手元に届きます。
必要書類とは?
年金分割のための情報提供の請求に必要な書類は
・年金手帳,国民年金手帳または基礎年金番号通知書
・戸籍謄本
の2つです。離婚後にこの請求を行うことになると、夫婦それぞれの戸籍謄本が必要になるなど、手続きが大変になるので、離婚前に準備しておくことにしましょう。
「年金分割のための情報通知書」が届くまでの期間とは?
「年金分割のための情報通知書」が手元に届くまでの期間は、それぞれが働いてきた職業によって違います。国家公務員・地方公務員・私立学校職員として勤務した期間がない人では約1週間、国家公務員・地方公務員・私立学校職員として勤務した期間がある人の場合には、1ヶ月ほどかかる場合もあるようです。
もし離婚を相手に切り出す前にこの手続きを行う場合には、家に郵送されてしまうのは困るということもありますよね。そんなときには郵送ではなく年金事務所の窓口で直接受け取るなどの方法もあるので、相談してみましょう。
合意分割の手続きや手順2.分割後の年金支給の金額を把握する
年金の支給額は、老後の生活を左右する大切なもの。実際に年金分割を進める前にどれくらい支給されるのかを把握しておくことも必要です。年金の見込み額は50歳以上の場合には、「年金分割のための情報提供請求書」の照会欄に記載することで、見込み額の情報を得られます。
合意分割の手続きや手順3.分割する比率の合意をおこなう
3号分割と違って合意分割では分割する年金の比率を双方で話し合って決めることができるのですが、その合意をしたということを示すためには決まった方法をとる必要があります。決まった方法以外での合意では年金事務所が受け付けてくれないということもあるので気をつけましょう。
- 裁判所の調停・審判(離婚訴訟になっているときには判決・和解でも可)
- 公証役場における公正証書作成
- 公証人役場における私署証書認証(当事者で記載した書類を公証人が意思確認する方法)
- 当事者2人または代理人が合意書を直接年金事務所に持参(事前に合意書を作成しなくても、年金事務所にある書類で作成が可能)
どの場合においても当事者の合意や書類への記載などが必要なため、離婚後の手続きになってしまった場合には、時間や手間がかかってしまうことがあります。
しかし離婚をする前に年金分割についての話し合いをすると、離婚自体の話し合いに支障があることや、離婚までの期間が長くなってしまうというようなこともあります。
早く離婚したいという場合には、離婚前に資料の請求などを気づかれないように行っておいて、離婚後に合意に進むという方法が良いということもありますので、慎重に判断するようにしましょう。
合意分割の手続きや手順4.年金事務所で手続きを行う
合意までこぎつけたら、年金事務所で「標準報酬改定請求書」に記載し提出します。このとき、当事者2人で年金事務所に行くなら「標準報酬改定請求書」と合意書の提出だけで手続きはできますが、そうでない場合には他に必要な書類があります。
またこちらの手続きも3号分割と同様に離婚から2年以内、また元配偶者が死亡した場合には死亡した日から1ヶ月以内が期限となるので、早めに手続きを行いましょう。
離婚を考えるときに年金で気にしておくべきこと
ご紹介してきた年金の分割は、結婚していた期間の記録を分け合うという考え方です。
そのため結婚期間が短い場合には、分割したとしても支給される年金が小額になるということがあります。
そのため離婚後の生活費のほかに貯蓄なども必要になってくるので、しっかりとした計画を立てることが必要となります。
まとめ
離婚のときに知っておきたい年金の分割についてお話しましたが、いかがでしたか?
手続きなど難しい内容が多いので、自分はどの分割方法になるのかわからないということもあるかもしれませんね。
そのようなときには年金事務所などで相談をして、自分に優位になるような方法を考えるようにしましょう。
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