雪の【名前・異称・種類】にまつわる美しい言葉や季語
雪には実に多くの異称や名前があることをご存知でしょうか。
日本語には「花」という言葉を使った雪の異称がたくさんあります。また、天気の影響でさらっとした雪や水分の多い雪などさまざまな雪に変わり、種類によって名前が変わるのです。
例えばよく使われる美しい表現として次のようなものがあります。
それでは、雪の名前・異称・種類にまつわる言葉や季語をチェックし、美しい日本語に触れてみましょう。
雪花/雪華
「雪花(せっか)」または「雪華」とは、雪の異称。「雪の花」とも言い換えられます。雪を花に見立てた綺麗な言葉で、似た言葉の「冬の花」も有名です。
昔から雪を花にたとえる表現が多くなるのは、桜が咲く暖かい春への憧れとも考えられます。寒い時期の雪を花に見立てることで、心に春を呼んで厳しい冬を乗り越える支えにしてきたのでしょう。
雪の花は季語でもあり、有名な俳句には次のようなものがあります。
磨なをす 鏡も 清し雪の花
松尾芭蕉
出典:https://idea1616.com/
六花
雪の異称である「六花(りっか、むつのはな)」は、雪の結晶の様子を表す言葉で、六方向に伸びる花のような雪を意味します。自然の美しさと不思議さを表現できる言葉です。
雪の結晶が美しい花のようになるのは、六角柱にくっついた水の分子が風や落下の影響を受けるため。自然の神秘を感じさせますね。
雪の結晶は地上に落ちると溶けてしまうことから散りゆく儚げな花を連想させ、おしゃれで風情もあります。
粉雪
「粉雪」とは、雪の種類の名前。風が強い天気の日に降るさらっとして乾燥している雪を意味し、別名パウダースノーとも呼ばれています。美しい冬の様子を表すのにぴったりな言葉です。
粉雪と聞くと綺麗な情景を思い浮かべるのは、氷の結晶から乾いた粉雪の状態になると風にのって軽やかに舞い、キラキラと綺麗に輝くため。
例えば、以下は粉雪を季語として使った風情ある冬の俳句です。
深雪やむ ときの粉雪に 星浮ぶ
松村蒼石
出典:https://karens8.com/
玉雪
「玉雪(たまゆき)とは雪の種類の1つで、玉のような形の丸い雪を意味します。冬の始まりや冬の終わりの暖かい日によく見られる種類の雪です。
「玉」という言葉には「美しくて優れているもの」という意味があるため、玉雪は美しい冬の情景を連想させます。
玉雪の使い方として知られているのが、四字熟語の「木肉玉雪(きにくぎょくせつ)」。幼い子供や若い女性の雪のように白く美しい肌という意味になります。
牡丹雪
「牡丹雪(ぼたんゆき」とは雪の種類の名前。べた雪という名前でも呼ばれ、冬の終わりの暖かい天気の日に降る水分が多い雪を意味します。
言葉の由来は、「水分が多い雪がぼたぼたと降るから」「大きな塊が牡丹の花びらのように降るから」などさまざま。美しい花を連想させることで雪の魅力が増し、もうすぐやってくる春への思いも表現できます。
以下は、牡丹雪を季語にした美しい俳句です。
牡丹雪 林泉鉄の ごときかな
川端茅舍
出典:https://jhaiku.com/
雪の【降る時期】にまつわる美しい言葉や季語
雪は種類だけでなく、降る時期によってもさまざまな表現があります。降る時期にまつわる表現の仕方が豊かになると、短い言葉で季節の変化を伝えられるようになり、表現の幅が広がるでしょう
例えば、次のような言葉が有名です。
それでは、雪の降る時期にまつわる美しい言葉を詳しく見ていきましょう。
早雪
「早雪」とは、一般的な時期よりも早く降る雪を意味する言葉。天気を表現する時の一般的な読み方は「そうせつ」ですが、装飾的な表現として使うなら「さゆき」と読んではいかがでしょう。
音の響きが美しく、本格的な冬の前に降る穏やかな雪を連想させます。寒いだけでなく、季節の変化や自然の美しさも感じさせる素敵な言葉です。
例えば、「さゆき」という読み方は10月や11月に生まれた子供の名前に使われることがあります。
初冠雪
初冠雪(はつかんせつ)とは初めて山に雪が降り積もること。漢字だけで判断すると「雪がかんむりのように積もった状態」を表すかっこいい言葉に見えますが、実は時期を表現する言葉として知られています。
初冠雪の具体的な意味は「山岳で夏の最高気温を観測した後、初めて積雪が認められた積雪」のことで、冬の到来を示す指標として用いられているからです。
例えば、天気予報では「初冠雪を迎える」と表現されます。
臘雪
「臘雪(ろうせつ)とは、旧暦12月頃に降る雪のこと。
名前の由来は「臘月(ろうげつ)」で、旧暦12月の異称。「臘」は動物をお供えする中国の祭りで、行事は日本に伝わりませんでしたが、言葉は定着しました。雪の積もった美しい冬景色にときめき、お正月が次第に近づいて心が踊る様子を連想させます。
「臘」という言葉は日常生活ではあまり使われませんが、意味を知るとイメージが膨らむのではないでしょうか。
涅槃雪
「涅槃雪(ねはんゆき)」とは、旧暦2月15日頃の涅槃と呼ばれる時期に降る雪のこと。
涅槃は仏教に由来する言葉で、釈迦が亡くなったことを意味します。釈迦の入滅を偲ぶように雪の時期が終っていく様子を連想させますね。
また、涅槃には安らぎや悟りの境地といった意味もあります。春が始まる前の静寂に包まれた様子も浮かんでくるのではないでしょうか。
雪の果
「雪の果(ゆきのはて)」とは、冬の終わりに降る最後の雪を表す言葉。「終雪(しゅうせつ」という表現もありますが、より風情のある表現を使いたい時は雪の果がおすすめです。
最後に行き着くという意味の「果て」を使うことで、最後を迎える雪の儚さや長い冬が終わって迎える春の喜びをイメージさせます。
以下は、俳句の季語として使った例です。
雪の果 牧場に透る 牛の声
皆川盤水
出典:http://www.haisi.com/
雪が【降る様子】を表現した美しい言葉や季語
雪は降り方もさまざまで、一面を真っ白に染め上げる大雪があれば静かに降り続ける雪もあります。
雪が降る様子を表す綺麗な言葉として、次のようなものが有名です。
それでは言葉の意味や使い方をチェックし、雪の降り方を表現する表現のバリエーションを増やしていきましょう。
はらはらと
「はらはらと」とは、雪が軽やかに降る様子を表す言葉。静かに美しく舞う雪を表現したい時におすすめの表現です。
同じような雪の降り方として「ぱらぱら」という表現もありますが、比較すると「はらはら」の方が静かで風情のある様子を連想させます。
例えば、「はらはらと舞う雪」「空から雪がはらはらと降ってくる」といった使い方が可能です。
しんしんと
「しんしんと」とは、雪が音をたてずに降る様子を表す言葉。静かで美しい雪景色を表現したい時に使ってみましょう。
「しんしん」は「深々」とも書き、雪が静かに積もりながら寒さが深まっていく様子を連想させます。音が一切しない幻想的な冬景色が浮かんできますね。
以下の俳句の季語は「寒さ」ですが、「しんしんと」を効果的に使うことで冬の静かな楽しみを巧みに表現した例です。
しんしんと 寒さが楽し 歩みゆく
星野立子
出典:https://haiku-textbook.com/
霏霏
「霏霏(ひひ)」とは、雪が降り続ける様子のこと。普段と違うおしゃれな表現を使ってみたい方におすすめの言葉です。
霏は漢字1文字で雨や雪の降る様子を意味し、文字を重ねることで絶え間なく続く雪の降り方を表現できます。「降り続ける」という直接的な表現よりも趣があり、印象に残るいい方ですよね。
例えば、「霏霏として舞い狂う雪」といった使い方をします。
綿々
「綿々」とは絶え間なく続く様子のことで、雪を伴って使うと「長く降る様子」を意味します。前述の「霏霏」と意味が似ていますが、より簡単に表現したいなら「綿々」がおすすめ。
「綿」とは綿花のことで、長い糸を紡ぐ様子から、途切れずに長く続くという意味で使われるようになったとか。白い綿花と白い雪は重なる部分もあり、言葉としてイメージしやすいですよね。
例えば、「綿々と降り続ける雪」のように使います。
蕭蕭
「蕭蕭(しょうしょう)」とは物悲しいさまを表し、雪と組み合わせると「物寂しい雪の降り方」を表現できます。自然の中で雪が静かに降る様子を表す時に使ってみてはいかがでしょう。
「蕭(しょう)」は単体でも「物寂しさ」を意味し、人里離れた静かな自然を連想させます。哀愁漂う自然を美しいと思うのは、「もののあはれ」を大事にしてきた日本人らしい感覚といえるでしょう。
少し難しい漢字ですが、印象に残る言葉ですね。
雪が【積もった状態】を表現した美しい言葉や季語
雪が降った後の景色は、普段と異なる表情を見せます。日本語には雪が積もった状態を表す綺麗な表現が多くあり、言葉を見たり聞いたりするだけでも幻想的な世界が浮かんでくるのではないでしょうか。
例えば次のような言葉があります。
それでは雪が積もった状態を表す言葉を紹介していきますので、お気に入りの表現を見つけてみましょう。
雪明り
「雪明り」とは、積もった雪の反射によって夜でも周りが明るく見えること。夜の雪景色をロマンチックに表現したい時におすすめの言葉です。
降り積もった雪は多くの光を反射する性質があるため、わずかな星の光でも明るく照らします。雪の明るさによって周囲の景観が浮かび上がる様子を想像するだけでもうっとりしますよね。
以下は、季語の「雪明り」で綺麗な冬の夜を連想させる俳句です。
雁なくや 小窓にやみの 雪明かり
正岡子規
出典:https://www.haiku-kigo-ichiran.net/
銀世界
銀世界とは、雪が降り積もって辺り一面が輝く様子のこと。
雪は白いにもかかわらず「銀」が使われる理由は、昔の人が光沢のあるものを「銀」や「白銀」と呼んでいたためです。つまり、銀世界という言葉は雪の反射によって美しく光る白色の世界を表しています。
銀世界と似た言葉として、「白銀の世界」や「雪化粧」も有名です。
衾雪
「衾雪(ふすまゆき)」とは、一面に白く降り積もった雪のこと。古風な言葉で雪が積もっている様子を表現したい時に使ってみてはいかがでしょう。
「衾」は平安時代に使われていた掛け布団を意味し、衾のように雪が積もっていることが由来です。昔の冬景色に思いを馳せながら、白一色の綺麗な景色を表現できます。
衾雪を季語にする使い方として、次のような俳句が有名です。
蕗(ふき)をとる 二足三足 衾雪
飯田蛇笏
出典:https://www.haiku-kigo-ichiran.net/fusuma/
撓雪
「撓雪(しおりゆき)」とは、木や枝をたわませるほど降り積もった雪のこと。短い言葉で雪がたくさん降った後の美しい景色を表したい時にぴったりです。
「撓」には「たわむ」「しなる」という意味があり、木々がたわむほどの大雪で辺り一面が雪景色であることが想像できます。「しおり」という音の響きもしなやかで綺麗ですね。
また、重い雪に耐える木々に着目すると、美しさだけでなく自然の力強さや厳しさも伝わってきます。
深雪
「深雪」とは、雪が深く積もった雪という意味です。ニュースや日常会話での一般的な読み方は「しんせつ」ですが、「みゆき」と読むこともあります。
俳句などで「みゆき」と読むのは、実用的な表現と区別して雪の美しさを表現するためです。深く積もった雪は時に生活の害となりますが、同時に静寂に包まれた美しい景色ももたらします。
以下は、深雪を季語に使った印象的な俳句です。
がうがうと 深雪の底の 機屋かな
皆吉爽雨
出典:https://www.weblio.jp/
風情感じる美しい雪の言葉で季節の表現を豊かにしよう
日本語には雪に関する言葉が非常に多くあり、言葉のバリエーションを増やすことで表現が豊かになります。表現力をアップするには、アウトプットすることが大切です。
言葉を覚えるだけでは言葉が身につきにくく、口に出したり書いたりすることで自然と使える語彙が増えていきます。
家族との会話で話題にする・SNSで発信する・日記で使うといった身近な方法を試し、日本の美しい雪景色を表現してみてくださいね。
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