いけばなの棚と小屋のような梁
ともにシステムエンジニアとして多忙な日々を送るKさんご夫妻。
トレッキングやランニングが趣味のご主人と、いけばなの師範である奥さまは、自然や植物が好きで、緑が豊かで都心にも近い三鷹エリアで、中古マンションをリノベーションしました。
木造家屋のような梁やいけばなの専用棚など、お二人の好みとライフスタイルにぴったり合った空間づくりについて、お話を聞きました。
予算調整のプロセスでも全員一致で残した天井の梁
——鉄筋コンクリートのマンションなのに、LDKの天井には木造の家のような梁が走っています。この斬新なアイデアはどこから生まれたのですか?
【奥さま】ドライフラワーや植物など、いろいろなものを吊るしたいという希望から、このアイデアが生まれました。
初期の打ち合せで、やりたいことを全部お伝えして、そこから予算を合わせていったのですが、普通に考えれば、天井の梁は生活に必要な機能ではないから、まっさきに削るポイントになってしまうところです。でも、リノベーションだからできる装飾的な工夫を盛り込みたいという気持ちが強く、この家のデザイン的なポイントにもなる部分。どうしても削りたくないという方向で、私たちと設計者の意見が一致しました。
結果、玄関や廊下の収納は既存を活かしたり、フローリングを既存の床の上から張ったりなど、細かい調整を積み重ね、予算面もクリアすることができました。
【ご主人】山が好きでトレッキングによく行くのですが、この梁はどことなく山小屋のような雰囲気もあり、親しみがわきます。斜めに走っているので、空間の広がりも感じますね。
予算を調整するプロセスを経験し、予算をかけるところ、かけないところを自分たちで細かく決められるのも、リノベーションの魅力だと感じました。何を残して何を諦めるか、選択は無数にあって何を選んでも自由。長時間の打ち合せは大変でしたが、一つひとつ決めていくことで、自分たちだけのオリジナルな空間ができていくのですね。
——梁は木目が特徴的なラーチ合板。木造の家の構造にも使われる材料です。この合板の印象もあり、とてもナチュラルに仕上がっていますね。
【奥さま】合板は荒々しくなるのではと思ったのですが、意外としっとりとしていい雰囲気で気に入っています。
私の趣味はいけばな、主人の趣味はトレッキングやランニング。二人とも植物や自然が好きで、天然の木や素材感のあるテイストが好きだったので、インテリアにも盛り込みたかった。そのような好みを反映した空間になっていると思います。
——壁にグレーやブルーなどの色味を取り入れているのもポイントですね。
【奥さま】LDKは一面だけグレーに、洗面室やトイレはブルー、寝室は水色。LDKの一角にある作業スペースの正面は黒板塗料、ウォークインクローゼットの外側は漆喰で、これらはDIYで塗りました。せっかく自分たちで選べるので、色を取り入れたいと思っていたのですが、LDKは冒険しきれなかった感がありますね。
暮らし始めてからは、落ち着いた雰囲気になり、ちょうどよかったと感じています。カラフルな花や植物を飾ることも多いので、背景としてはグレーで正解。トイレや洗面は思い切って好きな色を選びました。
いけばなの専用棚をつくり、花や植物に囲まれた空間に
——LDKの壁の一角には、奥さまの趣味であるいけばなの作品を飾る専用棚があります。これはどのようにリクエストしたのですか?
【奥さま】いけばなの作品は意外と大きく、サイズが重要なのです。奥行きも考慮し、背の高い花もいけられるように、約1mの高さと幅でつくってもらい、スポットライトを設置してもらいました。
いけばなは5年ほど前に始めたのですが、月に2回はお稽古に通い、お稽古でいけた花を、帰宅してからもう一度家でいけるようにしています。家では棚のスペースに上手く収まるように、アレンジしていけるのも楽しいです。
【ご主人】いつも家に季節ごとの花があるのは、気持ちが癒されますね。帰宅するとホッと落ち着くような感じがします。記念日に花を買って帰るようなことはなくなりましたが(笑)。
【奥さま】花は空間の彩りになりますし、インテリアとして楽しむツールにもなると思います。
私が習っているのは草月流という、自由度が高く前衛的といわれる流派。一般的に華道といえば、和室の床の間などに飾るイメージがあるかもしれませんが、草月流では型にとらわれず、花や植物をあらゆる空間を彩るものとして扱うため、どこに飾っても絵になるのです。玄関にもよく飾っています。
——花を暮らしやインテリアに取り入れるコツはありますか?
【奥さま】生花が難しいようなら、ドライフラワーのアレンジから始めてみるのもいいかもしれません。いけばな用の棚の周辺にも花や植物を飾ることが多いのですが、いけた後の花をドライにしたものは、手軽で飾りやすいように感じます。
梁に飾っている枝ものも、サンキライというクリスマスシーズンに出まわる植物をドライにしたもの。本当にただ梁に引っかけているだけなのですが、インテリアのアクセントになっています。
いけばなの花材として枯れた花や枝を使ったり、普段LDKに飾っているモンステラやユーカリなどの観葉植物の葉を切って使ったりすることもあります。慣れてくると自由な発想で、花や植物を扱えるようになってくるのではないでしょうか。いけばなだけではなくアレンジメントをはじめ、レリーフやオブジェをつくるなどの方法でも花を楽しんでいます。
広くて使いやすいキッチンが、新しい趣味の世界を広げる
——ご主人はトレッキングやランニングなど、いろいろな趣味をお持ちですが、最近はカレーづくりにはまっているとのこと。詳しく教えてください。
【ご主人】この家に住むようになってから、キッチンが広くて使いやすいので、料理が楽しくて、よくキッチンに立つようになりました。リビングと一体になっているから、会話をしながらテレビを見ながら料理ができて楽しい。
カレーをつくる時はスープだけでも4時間煮込むので、他のことをしながら鍋に目が届くのはいいですね。最初は趣味でつくっていたカレーですが、好きが高じて、最近では休日に知人の店で間借りカレー店を始めるまでに。
この家に引っ越してきたことで世界が広がりました。一方で、鍋やスパイスが増えて、収納が足りなくなってしまったので、棚を増やしたいなとも思っています(笑)。
【奥さま】以前からキッチンには2人で立つことが多かったので、広めにつくりたいと思っていたのです。水まわりの設備や仕上げは、使い勝手やメンテナンス優先で、ステンレスのシステムキッチンをセレクト。床もフロアタイルにしてもらいました。
——Kさんご夫妻は、物件探しからリノベーションまでワンストップでリビタのリノサポで家づくりをされましたが、この物件はどのように探し、決定したのですか?
【奥さま】以前の生活圏に近く緑が豊かな三鷹エリアに絞り、物件を探していました。
テレビのニュースで見た中古リノベーションに興味をもち、リビタのWEBサイトを見つけて会員登録。新着の物件情報などをチェックしながら、のんびり探そうと思っていたのです。そんな中で紹介してもらったこの物件は、井の頭公園にも近く、敷地もゆったりしていて、周囲に高い建物がないので晴れた日には窓から富士山も見えます。本質的な環境の気持ちよさを感じました。三鷹エリアは売り出される物件数がそれほど多くないため、ほとんど即決しました。
【ご主人】天井が高いところも気持ちがいいなと思いました。梁のアイデアや、既存の床にフローリングを張ることも、天井の高さがある物件だからスムーズに採用できたと思います。
駅までは徒歩14分ほど。少し距離がありますが、慣れてしまえば歩くのにちょうどよく、バスも便利に使えます。都心にも近く、よく行く高尾山にも近く、私たちのライフスタイルに合った住みやすい場所です。
——リノサポのサービスを利用してみていかがでしたか?
【奥さま】物件探しからのスタートでしたが、何もかも初めての経験で、わからないことが多いなか、一般的な不動産会社のイメージとは違い、住み手に近い立場からアドバイスをいただけました。
設計の打ち合せを進めていく時も、どこまで希望を出していいかわからなかったのですが、「最初にやりたいことを全部洗い出したほうがいい」とコンサルタントの与那覇さんからアドバイスをもらい、後悔がない家づくりができました。
予算を調整するのは大変でしたが、悩みながらもじっくり自分たちがつくりたい家に向き合い、楽しい時間を共有できたと感じています。
間取り、プラン
- 専有面積: 57.91㎡
- 間取り: 1LDK
- 既存建物竣工年: 1998年
- リノベーション竣工年: 2016年
玄関を入るとすぐ左手に寝室。既存を活かした下足棚、収納がある廊下沿いの右手に水まわりがある。
ドアの向こうはLDKで、一角にデスクを備えた作業スペース、ウォークインクローゼットがある。
ウォークインクローゼットは壁の上部が抜けており、梁が連続しているため圧迫感が抑えられている。
キッチンから水まわりへのアクセスも可能。
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