工業デザイン界の魔術師・柳宗理のキッチンツールから「用の美」を見いだそう

戦後日本のインダストリアルデザインを確立した柳宗理は、「造ることによってデザインが生まれる」と考えた希有なデザイナーです。試作を繰り返すことで万人が使いやすいツールを生みだしつづけました。 そんな柳宗理の仕事から、「用の美」についてご紹介します。

2015/09/03更新
工業デザイン界の魔術師・柳宗理のキッチンツールから「用の美」を見いだそう

柳宗理(やなぎそうり)とは

戦後日本のインダストリアルデザインの確立と発展における最大の功労者と言われる。代表作は「バタフライ・スツール」。ユニークな形態と意外な実用性を兼ね備えた作品が多く知られた。実父は柳宗悦。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E5%AE%97%E7%90%86

日本で現在当たり前のように確立されている工業デザインというものを、戦後に確立させた立役者が、柳宗理です。まずデザインありきの道具ではなく、「造ることによってデザインが生まれる」と考え、限りない試作の繰り返しから、万人に“使いやすい”と認められるツールを生みだすという方法を採りつづけました。そんな”工業デザインの魔術師”、柳宗理の仕事から、“使いやすくて美しい”「用の美」についてご紹介します。


 

蝶が羽根を広げたような美しい椅子、こちらは柳宗理の代表作のひとつ、「バタフライ・スツール」。


 

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バターナイフ

立体模型で実際に使い勝手を検証しながら作られ、ひとつひとつに2年の試作を経て完成させたカトラリー。使えば使うほど完璧な食べるための道具は、つなぎ目が無く、衛生的なのも特徴的。使いやすく美しい「用の美」を表現した柳宗理デザインの生活道具が、日々の暮らしを豊かにします。

http://item.rakuten.co.jp/angers/140062/


こちらは柳宗理デザインのバターナイフです。はじめ、だれもがその大きさと重さに驚くといいます。一般のバター入れやマーガリンの入れ物には入れっぱなしにはできないという、どうしてこんなに?というくらいの大きさ。

 

けれど、その広さと重さが、冷蔵庫から出したばかりのまだ固い状態のバターを削りやすくし、またトースト面に塗るとき、その威力を発揮します。


 

ユーザーの多くが“ナイフの面が広くてとても塗りやすい”と思わずネット上で声を上げるバターナイフ。小さいナイフで、自分の指先の力だけでバターを塗り広げようとすると、力がいって面倒だという経験は、だれもがおもちだと思います。そのため重さと面の広さを持つバターナイフというのは、必然的に塗りやすいということがご納得いただけると思います。


 

考えれば、“ああ、たしかに”と思える柳宗理のバターナイフ。またこのナイフの優美な美しさも忘れることはできません。“使いやすいこと、そして美しいこと”「用の美」がみごとに具現されたバターナイフです。


 

シュガーレードル

こちらは柳宗理デザインのシュガーレードルです。ふつうのシュガースプーンとくらべると、すくう面が寝ていず、絶妙な角度で立ち上がっていることがわかります。すくう面はぜんたいが曲面で囲まれ、ちょうど極小のボウルが柄の先に付いている形です。いちどすくったものをこぼさず、コーヒーカップや料理の鍋まで保持していけることがわかります。そのため使ったことがなくても、このスプーンがシュガーや粉ものをすくうときに、使いやすい形になっていることがわかります。


 

こちらはステンレス加工で有名な、新潟県燕市の製作所によって作られる「仔犬印」のシュガーポットです。柳宗理のシュガーレードルとともに使われることの多い名品のひとつです。同じステンレスの柳宗理のシュガーレードルの、まるでセットであるかのようなこのポットへの収まり具合の良さをご覧ください。


 

こちらのシュガーポットとミルク入れ、そして柳宗理のシュガーレードルは、このような形で使われることが多い名品どうしのコラボです。


 

余談ですが大阪の有名家具ブランド、トラックファニチャー併設の「Bird」でもこの仔犬印のポットとミルク入れが使用されています。Bird では柳宗理のシュガーレードルは使われていませんが、かようにステンレスの名品どうし、仔犬印と柳宗理のシュガーレードル、日本の多くの場所でセットで愛用されている3点です。


 

パンチングストレーナー

こちらは柳宗理のデザイン、「パンチングストレーナー」です。いわゆる「金ザル」ですが、柳宗理デザインのこのザルの出現によって、従来の細いワイヤを編みこんだ仕様の金ザルの不便さから料理者は解放されることになったのです。従来は網の切れた部分が指にひっかかってキズを作り、編み目にからんだ細かい食材が洗ってもなかなか落ちないという不便さがありました。

このパンチングストレーナーは、水を通すための編み目があっても、それはフェンス状に編み込んだワイヤではなく、ステンレスの一枚板にパンチング穴を開けた、つまりそれ以外は全面がつながっているという画期的なアイデアで、多くの料理者を手間から救いました。


 

トング

こちらは柳宗理デザインのトングです。汁物用に、はさむ部分が網目状になっているトングもあります。こちらも使いやすいと定評のあるトング。合わせたときにズレがなく、ぴたりと合致する先端部によって、箸でつかみにくい薄い生肉類、形が不安定なものなどでもしっかりとつかむことができます。


 

このように、テーブルに一時置いたときでも、わずかな1点以外、先端部がどこにも触れないという、衛生面においても考え抜かれたデザインです。


 

アルミフライパン・セラミックコーティング

こちらは柳宗理の有名な“鉄のフライパン”の新しい形です。全面がセラミックコーティングされ、“鉄のフライパン”に対する、こげつきやすさという使用者の懸念を払拭し、初心者でも使いやすくしたアルミフライパンです。


 

こちらはもともとの、柳宗理デザインの「鉄のフライパン」です。使い慣れると鉄ながら焦げ付きにくくふんわり柔らかに仕上がるなど優れて人気のあるフライパンですが、使い始めにいくどか油を染みこませる必要があるなど、初心者には焦げ付きの心配を起こさせる点を、柳宗理氏の死後、柳工業デザイン研究会の手によって、こげつきの心配の少ないセラミックコーティングのアルミフライパンという新しい形のものが生まれました。


 

もとの鉄のフライパンも新しいアルミフライパンも、ぴったり合ったフタが付いています。このフタも使いやすさにおいて定評のあるもので、ほんの少しズラして傾ければ、中の具材をこぼさず余分な油や汁気などを切ることができるというすぐれた使い勝手になっているのです。


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